先生の働き方Design研究所

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道徳「正しさとは何か?」を考えました。

 今日の道徳は、鳥肌が立ちました。

 

 

 題材はこちらの短編集の1本目。

 

 

きみの町で

きみの町で

 

 

 「席をゆずる」で迷う4人の様子が順番に描写されています。

 

 一人目のカズオは自分の目の前に二人のおばあさんがいて、それを理由に席が譲れず悩んでいる状態。

 二人目のタケシは、自分も電車賃を払って乗ってるんだと目の前に立つ高齢者の方に対して、複雑な思いを抱いたまま、本を読んでいます。

 三人目のヒナコは、自分の体調が悪いのを理由に、目の前の赤ちゃんづれの親子に対して、席を譲れず、隣のおじさんが譲った後に舌打ちしたことに、罪悪感を感じています。

 四人目のサユリは初めて席譲ったものの、相手のそっけない反応、そしておばさんに褒められたものの「だって困っている人やかわいそうな人を助けてあげるのは当然のことです!」という言葉に、周りの空気が重くなるのを感じ、戸惑います。

 

 この物語の最後には、

 

電車は走る。数え切れない「ただしさ」はすれ違ったりぶつかり合ったりしながら、電車に揺られている。床に転がって誰かに踏み潰されてしまった「正しさ」もきっとそこにはあるだろう。あなたの「正しさ」はどこにある?そしてそれは誰の「正しさ」と衝突して、誰の「正しさ」と手を取っているのだろう。

 

 と綴られています。

 

 今日の道徳の授業では、4人の登場人物に対して、物語が進むたびに「どう思う?」をペアで話しながら、全体でも確認。カズオ、タケシは、「席を譲ろうよ」「そのままでいいんじゃないか」が半数ずつくらいでしたが、ヒナコ、サユリの話では、みんなも戸惑っていました。

 「どちらかが正しいんじゃなくて、お互い正しいことを言っている。でもそれを相手に押し付けているんじゃ良くない」なんて意見も出てきました。

 

 最後の一連の文章を読んだ後に、「じゃあみんなは『正しさ』についてどう考える?具体的なエピソードはある?この物語を読んでみてどう感じた?」をジャーナルに書いて振り返ってもらいました。

 

 僕は道徳には場の転換が必要だと思うので、最初は全員前。後半はジャーナルで振り返って座席を戻して全体で話しました。

 

 その話し合いの中で

 

「席をゆずる人は正しいのだろうけど、譲らない人が正しくないわけじゃない。」

「自分の正しさがいつも正しいとは限らない。だからこそ黙っていないで、伝えていく必要がある。」

「正しさは人それぞれ。だから相手の話を聞く、話し合うことをしていく必要がある。」

「相手の正しさと自分の正しさを擦り寄せていくイメージ」

「自分の正しさを押し付けちゃダメ、主張しすぎちゃだめ。いつも、それは他の正しさと比べてどうかという他を見る視点が必要」

 

という意見が出てきて、やっぱ子どもってすごいなぁと思ってしまいました。

 

 ちょうど遠足で電車に乗るこのタイミング。やってよかったなぁと思いました。正しさをすり合わせていくために、振り返る、対話する、子どもに聞く…僕ら教師もそういう必要性があります。大人と子供では役割の面で正しさのぶつかり合いが起こります。それでも相手の声に耳を傾け、聞いていかないといけません。

 

 

 

きみの町で

きみの町で

 

 

 それにしてもこの短編集、おすすめです。重松さんの文章には、子どもたちの聞き入る目の輝きがあります。